日本人の免疫と百日咳――家族が知っておきたいこと
百日咳は、強く長く続く咳が特徴の感染症です。赤ちゃんや体の弱い人では、肺炎や脳に影響を与えることがあり、まれに命に関わることもあります。大人でも咳が何週間も続き、日常生活や睡眠に支障が出ることがあります。自然に軽く治る場合もありますが、乳児や高齢者には油断できません。
近年、日本人の免疫力が下がっていると指摘されます。理由のひとつはワクチンの性質です。日本で使われている百日咳ワクチンは不活化無細胞ワクチンで、安全ですが免疫が数年で弱まります。全細胞ワクチンのように長期間強い免疫を作ることはできません。また、新型コロナワクチン接種によって、体の免疫バランスや細胞の感染防御機能が変化する可能性が一部で指摘されており、これも感染に対する感受性を高める一因です。さらに、過剰な手洗いや抗菌製品の使用、偏った食生活なども、自然免疫の刺激を減らし、抵抗力を下げています。
診断は簡単ではありません。咳だけでは風邪やRSウイルス、溶連菌感染症と区別がつきにくく、病院でも細菌性百日咳の誤診は珍しくありません。PCRや血液検査は補助的な手段で、単独では確定診断にはなりません。咳の様子や家族内感染の状況などを総合して判断する必要があります。乳児や高齢者では、早期受診が命を守ることにつながります。
治療は、まずマクロライド系抗生物質が使われます。耐性菌や副作用がある場合は、成人向けにバクタ®(TMP–SMX)やテトラサイクリン系が選ばれることもあります。副作用の心配があるため、必ず医師の指示で使用することが大切です。家庭では、水分補給、栄養、睡眠、蒸気吸入など体力を守るケアが有効です。漢方も咳や痰を和らげる補助として活用できますが、病気そのものを治すものではありません。
流行の背景には、国内だけでなく国際的な要因も大きく関係しています。中国や東南アジアで増えているマクロライド耐性百日咳株が日本に入ることが、流行の一因です。梅毒や他の輸入感染症も同様で、国際的な人の移動が感染拡大を助けます。免疫が弱まった日本人にとって、こうした菌の侵入は特にリスクが高くなります。
ワクチンは万能ではありません。百日咳ワクチンは、麻疹ワクチンのように一度打っただけで一生感染を防ぐものではありませんが、赤ちゃんや免疫が弱い人の重症化や入院を防ぐ力は確かにあります。一方で、副作用や免疫反応の個人差、免疫持続の限界などの課題もあります。功と罪を理解したうえで、接種判断をすることが大切です。
将来的には、百日咳ワクチンもmRNA型ワクチンに変わる可能性があります。mRNAワクチンは体に「菌にどう立ち向かうか」を教える新しい仕組みで、免疫持続力や感染防御力の向上が期待されます。しかし、mRNA型ワクチンや将来的なmRNA治療薬は未知のリスクを伴います。体内で遺伝子情報を使ってタンパク質を作らせる仕組みは、短期的には安全でも、長期的な副作用や免疫反応の変化についてはまだ十分に解明されていません。体質や免疫の状態によっては予期せぬ影響が出る可能性もあり、慎重な情報評価が必要です。
百日咳は、ただの「長引く咳」と思ってはいけません。赤ちゃんや家族の命を守るために、感染症として意識する必要があります。自然に軽く治る場合もありますが、乳児や高齢者には油断できません。輸入感染症のリスクや免疫低下の現実を理解し、ワクチン・早期受診・家庭でできる免疫サポート(栄養、睡眠、漢方など)を組み合わせることが、家族全体の安心につながります。
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